会社の資金繰りが厳しくなったとき、
経営者が最初にやるべきこと
この記事のまとめ
会社の資金繰りが厳しくなったとき、最も避けたいのは、資金が尽きる直前まで何もせず、会社を立て直すための選択肢を自ら減らしてしまうことです。
資金に余裕がある段階であれば、追加融資、金融機関への返済条件の変更、経営改善、私的整理、スポンサー型M&A、事業譲渡など、複数の方法を比較して会社や事業を残すことができます。
しかし、「来月の給与が払えない」「数週間後に資金がなくなる」という段階になると、金融機関との交渉やスポンサー探索に使える時間もなくなり、選択肢は急速に狭まります。
「あといくら借りられるか」ではなく、
「この会社には、再生のための時間があとどれくらい残されているか」
資金繰り表を作る目的も、単に現預金残高を確認することではありません。いつ資金が不足するのかを把握し、それまでの時間を使って、金融機関との交渉、経営改善、債務整理、スポンサー探索など、どの手段を取るべきかを決めることにあります。
事業再生において、資金は、会社を動かすためのお金であると同時に、再生のために残された時間を買う要素となります。
この記事のまとめ
- 企業価値担保権は、会社の総財産を担保とし、事業の将来性や収益力を踏まえた融資を促進する制度です。
- 早期事業再生法は、多数決と裁判所の認可により、金融債務の調整を可能とする制度です。
- いずれも、事業価値が残っている早い段階で事業再生を図るための仕組みです。
- 今後は、事業価値を踏まえた資金供給や金融債務の調整が重要になります。
- 必要に応じて、スポンサー型M&Aや事業譲渡、法的整理も検討します。
- 企業の状況に応じて、どの段階でどの手法を選ぶかが重要になります。
第1 資金がなくなるほど、会社を残すための選択肢は減っていく
「まだ預金があるから大丈夫」
資金繰りが悪化した会社で、経営者がそう考えてしまうことがあります。
しかし、事業再生では、資金が残っているうちに何をするかが非常に重要です。
例えば、会社に3,000万円の現預金があっても、毎月1,000万円ずつ資金が減少しているのであれば、単純計算では約3か月しかありません。
その3か月の間に、金融機関との返済条件の交渉、不採算事業の整理、固定費削減、新たな資金調達、私的整理の検討、スポンサー探索などを進める必要があります。
ところが、資金がほとんど残っていない段階になると、これらを検討する時間そのものがありません。スポンサー型M&Aにも、金融機関との私的整理にも、準備と交渉のための時間が必要だからです。
資金が減るということは、単に預金残高が減るということではありません。会社を救うために使える選択肢が、一つずつ失われていくということでもあります。
第2 「来月払えるか」ではなく、「何か月残っているか」を見る
資金繰りが悪化したときには、資金繰り表を作成する必要があります。しかし、事業再生の場面では、単に表を作るだけでは意味がありません。
知りたいのは、「この状態を続けた場合、会社はいつ資金ショートするのか」です。
例えば、現在の現預金が5,000万円、毎月の資金流出が1,000万円であれば、単純計算では5か月です。その5か月の間に金融機関との協議や事業改善を進める必要があることを考えると、決して長い期間ではありません。
資金繰りがさらに厳しい場合には、月単位ではなく、週単位、場合によっては日単位で、「何月何日に、いくら不足するのか」まで確認する必要があります。
資金繰り表は、単なる経理資料ではありません。会社に残された「時間」を可視化するための資料です。
第3 苦しい会社ほど、「とりあえず借りる」が危険なこともある
資金が減ってくると、多くの経営者は「追加融資を受けられないか」と考えます。もちろん、一時的な資金不足であれば、追加融資によって問題を解決できることがあります。
しかし、会社によっては、借入れを増やすことで問題を先送りしているだけというケースもあります。
例えば、本業から年間5,000万円のキャッシュを生み出していても、借入金の元本返済が年間8,000万円あれば、会社からは毎年3,000万円ずつ資金が流出します。
この会社の問題は、必ずしも本業ではありません。会社の収益力に対して借入金の返済負担が重すぎることです。
このような場合には、さらに借入れを増やすよりも、金融機関と協議して元本返済を一定期間猶予してもらい、その間に会社を立て直す方が合理的なことがあります。
逆に、本業そのものが大幅な赤字であれば、借入金の返済を止めるだけでは足りません。赤字事業の整理や固定費削減など、会社そのものを変える必要があります。
第4 すべての支払いを続けることが、会社のためとは限らない
経営者ほど、「借りたお金は約束どおり返さなければならない」「取引先への支払いを止めてはいけない」と考えるのは当然です。
しかし、資金が限られている会社では、すべての支払いを従来どおり続けることで、かえって会社の再生可能性を失うことがあります。
例えば、借入金の元本返済を続けた結果、給与や重要な仕入先への支払いができなくなれば、従業員が離れたり、商品の供給が止まったりする可能性があります。
一方で、仕入先への支払いを無計画に止めれば、事業そのものが止まってしまうこともあります。
したがって、「どの支払いを止めるか」ではなく、「会社の事業価値を残すために、限られた資金をどこに使うのか」という視点が重要になります。
第6 最も大事なことは、早期の対応
資金繰りが厳しくなった会社では、「融資を受ける」「銀行に返済を待ってもらう」「経費を削減する」といった個別の対応に目が向きがちです。
しかし、それらはすべて手段にすぎません。最初に考えるべきなのは、どうすれば会社を立て直すための時間を確保できるかということです。
追加融資によって時間を確保する会社もあります。金融機関への元本返済を猶予してもらうことで時間を確保する会社もあります。その時間を使って不採算事業を整理することもあれば、スポンサーを探すこともあります。
自力での再生が難しければ、私的整理や法的整理を検討する場合もあります。
重要なのは、資金がなくなってから考え始めないことです。
「あと数か月は大丈夫」ではなく、
「あと数か月あるうちに何をするか」
事業再生において、手元資金は単なる預金残高ではありません。会社を残すために使える時間そのものです。そして、その時間を有効活用するために我々専門家がいます。